
金閣寺は良い。
外国人が多くなった京都の街にに少し戸惑いもあったけど、金閣寺を眺めていれば思い描いた京都を肌で感じられる。
友人と三人で鹿苑寺を一周して旅情を堪能した帰り道、参道のすぐ前に茶屋的なお店があった。
そこでのもやもやな出来事。
店舗外にイチオシなのか、カラー印刷されたPOPが目に入る。
「はんなり甘酒」とある。
ミーハーな私達を呼び込むのには充分すぎるネーミング。
買いましょう。
暖簾をくぐると品の良さそうな白髪交じりの女性店員さんが一人。
まさに「はんなり店員」だ。期待通り。
まずは焼き饅頭を3つ頼んでみた。友人がお返しに甘酒を注文してくれた。
友人「はんなり甘酒を2つください」
店員「どちらになさいますか?」
場所に相応しい京都弁。とても上品。
外看板には敷き詰められた氷の上に甘酒が置かれた写真が載っていたが、「HOT!」とマジックで書かれていたのを思い出した。
友人「じゃぁ冷たいのを一つ」
店員「 」
え?!今、無視した?
店員は先に注文してあった饅頭を焼いている。
確かに一人で切り盛りしている様子からすると二つ同時に注文をお願いするのも悪かったかもしれない。
友人はすぐに察して言い換えた。
友人「あったかいのをもらおうかな」
店員「どちらもありますえ」
ああ良かった。聞こえていたんだ。忙しいから無理もない。
饅頭が良い焼き加減になった頃合いに再び注文。
友人「じゃぁやっぱり冷たい甘酒をもらおうかな」
店員「 」
二度はおかしい。これは完全に無視している。
饅頭を渡されて、それを食べながら彼女を見ているとようやく何か喋った。
店員「こういうの初めてやから」
え!外看板出してるぐらいイチオシ商品のはず。そんなはずないと思っているとこう続ける。
店員「氷を入れて、味はどうかな。ちょっとお兄さん混ぜてみて」
オレが?まぁ混ぜるけども。口に入れてみると甘酒に豆乳をブレンドしたものらしい。はんなりと美味しい。
友人「美味しいですねコレ。じゃぁもう一つはあったかいのを」
店員「あったかいのも冷たいのも、どちらもありますえ」
正気か?ファインプレーとも言える友人の機転の利いたホット甘酒への切り替えを白紙に戻すつもりなのか。
このチャンスを見逃すのか。それとも、さっきビギナーズラックで作ったコールド甘酒に自信がついたのか。
でも、こういう欲が出た時が一番危ういもの。ジーザス店員!フラグが立つときはいつもこうだ。
友人「・・・あったかいのを一つください」
彼のこういう所が人として素晴らしい。芸人風情ならもう一度コールド甘酒を頼むだろう。
彼こそが「はんなり客人」だろうと思った金閣寺の思い出。

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